蟲養い
- 罹横丁

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「……光忠に言わなければならないことがある」
「なんだい?」
 決意に満ちた大倶利伽羅の表情から察したのか、既に心の準備が出来ているといった雰囲気で居住まいを正した。腕にのせられていた燭台切の手が離れてゆく。掌の温度と重みが消えてしまい、名残惜しさと心許なさがわっと胸に押し寄せてきた。
「光忠がこの本丸に来る前に……、俺は別の本丸の光忠と恋仲にあった」
「……そう」
 燭台切は短い相槌を打つにとどめ、然して驚きはしなかった。むしろ案の定、予測した通りだという風に平然と大倶利伽羅の話に耳を傾けている。けれども膝の上におかれた両の拳を、僅かに握り直した。

 大倶利伽羅は演練先で知り合った燭台切と恋仲になり度々逢瀬を重ねていたが、彼の本丸に大倶利伽羅が顕現したことで関係が終わってしまう。その後大倶利伽羅の本丸にも燭台切がやって来たが別れた燭台切への想いを断ち切れず、水銀のように虚ろなあやかしにとり憑かれてしまう――という、蟲師の鏡が淵をモチーフにしたみつくりです。

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作品について

作品名 蟲養い
作家名 弥勒 年齢区分 [R18]
発行日 2016/10/09 発行イベント 閃華の刻 火華11
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